アニメ『ケムリクサ』の考察をしていきます。
内容としては、裏設定とか、各要素のモチーフなどを考えることより、
物語をつぶさに観察して、世界やキャラの深みを掘り下げていくことに特化しています。
※筆者個人の考えに過ぎませんので、参考程度にお読み下さい。
※共感の他、間違いや別な意見などもあれば、
遠慮なくコメントして(本ページ下部から)頂ければ幸いです。
※最終話までの視聴を前提に書いています。ネタバレ必至です。
作品の公開順に追っています。
ここでは、第9話Aパートの前半(九島到達から山頂到達まで)について。
過去の記事はこちら。
第9話 Aパート 前半
※以降のセリフの引用(❝ ❞内)は、全て
『ケムリクサ』第8話(©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト) を出典としている。
冒頭のやり取り
バカでかいものは見える
九島の山を指差して、「バカでかい」と叫ぶりな。
「遠くが見えない」と言っても、大きいものは見えているようだ。
要は、近眼っぽい感じなのだろう。
白い霧
九島のふもと付近に、白い霧が確認できる。
白い霧といえば、七島でも発生していたが、両者は同じものなのだろうか。
七島の霧は、わかばも推測したとおり、大木による影響だと思われる。
即ち、「大木により浄化された赤霧」である。
しかし九島には、七島のように緑色のケムリクサの影響が及んでいるようには見えない。
ということは、九島の霧は、「まだ汚染されていない霧」なのだろうか。
11話からわかる通り、この世界(船内)は、ほとんどが霧(ケムリ?)で埋め尽くされていたが、
これがそのまま残っているだけなのでは。
赤霧は、下に溜まる性質があるようなので、
高地の九島は地表に霧が残りやすかったのかもしれない。
根は島の下も通れる
わかば「根はちゃんと続いています。 たぶん、この白い霧の下を通っているのかと。」
「白い霧の下」は、もう地表の下になっているので、
赤い根は、島の下だろうと通ることができると、ここでわかる。
赤霧や赤虫も同様。
船には底があり、そこには足場がある。
赤霧は、七島より手前の島々の下にも及んでいたことから、
各地の壁は、島の地面の下までは続いていない、と、これまでの考察でも述べた。
この辺は省略していく。
島の下の葉脈らしきもの
これも、過去の考察でも何度も取り上げたとおり。
ケムリクサで模造した地盤は、葉脈のようなものが骨組み的に構成されているようだ。
九島の荒廃は、なぜ最も進んでいる?
葉脈丸見えということは、九島の荒廃は、他の島に比べると一段と進んでいることになる。
山以外は、ほとんど崩され尽くしているような状態だ。
山も、かなり高い位置まで、崩れているように見える。
なぜ九島がこれほどまでに荒れているのか。
荒廃の原因は、赤い木と、そこから生まれる赤虫や赤霧だ。
ということは、九島ではこいつらが特に活発だったということだろう。
赤い木が活性化するきっかけがあるとしたら、おそらくは水。
つまり九島には、(七島ほどではないが)水が豊富にあったということだろうか。
そもそも転写の目的は?
その理由を考えるために、ここで少し視点を変える。
そもそも、「星の文化財の途中経過をコピーする」という目的で、
この船内の世界は形成されている。
ここで言う「文化財」とは、「人間の生み出した文化遺産」のことだろう。
市街地などをメインに転写されているのは、このためだ。
これにはあまり当てはまらない島が二つある。
湖を転写した七島と、山を転写した九島だ。
これらが、転写されたのは、なぜなのか。
七島の湖の転写
まずは七島の湖。
これは、ケムリクサの稼働に、大量の水が必要となるため、
巨大な水源を船内に転写させた、と考えられる。
水を使って、水を転写した…?
物理法則が乱れてしまいそうだが、ケムリクサパワーのおかげ、
ということで…。
メカニズムは考えてもわかるわけないので、ここでは目的についてだけ語る。
七島の湖は、文化財としてではなく、水が必要だったために転写された。
九島の山の転写
次に、九島の山だ。
八島の山は、文化財(黒部ダム)に付随して転写されたものだと解釈できるが、
九島は、どう見ても山がメインである。
これを転写した理由はなにか。
単純に考えよう。
「富士山の造形は残すべきだ」とワカバが判断した、
あるいは、「富士山の造形が、人工的な文化財と勘違いするほど美しかった」
ということではなかろうか。
いずれにせよ、「富士山はコピーしておくべき」と、ワカバに判断された。
だがここで問題が生じる。
他の転写物に比べて、富士山は大きさも高さも、規格外すぎるではないか。
空橋の比ではない物量だ。
こんな巨大なものを、他と同じように転写できたのだろうか。
九島の山を転写した過程
そしてここからは、筆者の完全な妄想となる。
富士山を一度で転写するためには、
七島の水を、例の転写機に補給した程度の量で得られる出力では、とても足りなかった。
そこでワカバは、富士山の近くにある水源を転写し、
そこの水を直接使用する方法を、考えついた。
富士山の周りには、山中湖や河口湖や本栖湖など、豊富な水源がある。
富士山転写のために、これらの湖を転写していたのではないか。
あるいは、富士山とセットで景観を残しておきたいと考えただけかもしれないが。
こうして赤い木が九島で活性化した?
ここで、話を戻そう。
上記の通り、九島に水源があった、と仮定するなら、
赤い木がそれを見逃すわけがない。
七島より向こう側に行くのが、壁で防がれ困難になったことから、
赤い木は、九島の水源まで移動した。
そしてそこを拠点とし、水の消耗を気にすること無く、
破壊の限りを尽くしたのではなかろうか。
長くなってしまったので、簡単にまとめる。
九島が最も荒れ果てていたのは、
そこに水源があり、赤い木が活性化できたから。
憶測の部分が多すぎるが、
結局こういうことだったのではないだろうか。
霧を食べた?
りな「ちょっと霧無くなってきたかナ。食い足りないナ。」
聞き逃してしまいそうな、この発言。
一瞬、何を言っているのか、よくわからないが…。
遡ると、山登りはじめに、りなが何か食べている様子があった。
りな「ひょいぱく。」 「今何か食べたナ?」
「たべてないナ。(口になにか含みながら)」
このとき、霧を食べていた、ということか…?
自分の足で歩くわかば
わかば「きっついですねえ…。」
りつ「わかばくん、乗っていくにゃあ?」
わかば「大丈夫です! 歩きます、歩きます。」
「きつい」と言いながらも、自分の足で山を登るわかば。
無論、「トレーニングになるから」とかそういう理由ではない。
周囲に赤虫の気配もないなら、りつの負担を少しでも減らすために、
電車を降りて歩くべきだ、と判断したのだろう。
前回(8話)の出来事もあって、自分の無力感がより一層強くなったせいかもしれない。
9話頂上付近でも、「僕はろくに戦えない」と発言し、寝ずの対策思案を始めている。
結果的に、この行動が、再び物事をいい方向に進めているのだが…。
常に「自分の出来ること」を模索し続けるわかばの姿勢には、
ほとほと感心するばかりである。
水のボックスが1つ減った
山の中腹で一休みしたところで、水のボックスが1つ減っている。
ふもとからここまで、あっという間に来たように見えるが、
赤虫こそ出ずとも、かなり長い道のりだったようだ。
富士山を0合目から登っていると考えると、現実的にも辛い。
(半日くらいかかります)
また、山頂の休憩時には、
さらにボックス半分の水を消費している。
ヌシとの接敵で、結構消耗してしまったか。
次回、第9話 Aパート 後半!
9話Aパートは、一回で書ききれると思ったが、
九島荒廃の理由で、思いの外捗ってしまった。
次回! 九島の壁とヌシ!
ここからも引き続き、お付き合いいただけると、幸いである。
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コメント
お疲れさまです。更新ありがとうございます!
この回のアミダくじ通路のようなものが、オオオニバスの葉裏の葉脈のようだと考察したTwitterを放送直後に見たときには、ニュータイプの革新を思わず信じそうになったそんな回でした。w
ugさんの「琵琶湖と富士山はなぜワカバセレクションに入ったか」の考察は、とても興味深かったです。考えると確かに謎ですね。
でも水の補給の為とすれば、富士の湧き水や富士五湖が10島の近くにあれば7島まで水を取りに行かなくてもいいわけですし、説明つきそうです。
9話の試行錯誤するわかばのすごさは、まるであのパークの鞄。。ゲフンゲフン。。ww
◆姉妹の眼には、この世界がどう見えているのか? という話。
最近別の考察で知ったのですが、視力強化されていない姉妹には、物体はそれを構成するケムリクサの発光色以外の色がはっきりと認識できず、濃淡グレートーンのシルエットで構成された世界に見えているのではないか。という話は的を射ている気がします。
遠方はシルエットが重なり合ってしまって判別できないとか、水とそうでない液体の判別が出来なかったりとか、りくがわかばをムシと誤認したりとか、色々説明できそうです。
多くの見解が、即座に共有されるこの時代だからこそ、
『ケムリクサ』の面白さがさらに増しているのかもしれません。
「湖と山は、人工物じゃないじゃん!」と、最近になって突然気が付きました。
監督が舞台として扱いたかった、といえばそれまでなわけですが、
どうせならもっともらしい考察をしてしまえ、と思い、至る。
りつが色を判別できないのは、2話ではっきりしてますね。
りなが微妙なところで、モモイロの葉を「モモちゃん」と呼んでいたり、
シロを「シロいの」と呼んでいたり…。これらは、他の人が呼んでいるシーンが無いんですよね。
まあどうにでも説明はつきますが…。
反対に、りつは「遠くが見えない」という発言やしぐさは、一度も無いんですよね。
前半OPでは、空橋から九島を眺めているような静止画もあるし。
単色のシルエット的視界で見えている、という考察は、おもしろいですね。
少なくとも、りつの視界はそうなっていそうです。
しかし、りくは本気でわかばをムシと判断していたと思います!(笑)
1話のりんたちも、わかばを新種のムシと判断していたくらいですしね。
「人を見たら泥棒と思え」ならぬ、「ムシと思え」という、厳しい世界です。
いつも興味深く読ませていただいてます。
九島の荒廃についての考察、納得のできる内容で素晴らしかったです。
地盤がしっかりしていて、本筋には深く関わらない部分でも掘り下げられるのがケムリクサの魅力の1つですね。
りなの「食い足りないナ」発言ですが、僕は
霧がなくなり視界が晴れると何かを食べたことが(特にりんに)バレる
↓
でも新しく見るものがまだまだあって気になる
↓
食い足りないナ!
という風に解釈していました。
何かを食べたことをごまかしたくだりがあったことから考えて、視界が悪ければイケると踏んでいたのでは。(かわいい)
ありがとうございます。納得頂ける内容で何より。
掘り下げが楽しい作品です。ほんと。
なるほど、視界不良の中で、こっそり色々食べてた、というわけですね(笑)。
霧を食ったにしては、頬張り過ぎだと思ってました。