アニメ『ケムリクサ』の考察をしていきます。
内容としては、裏設定とか、各要素のモチーフなどを考えることより、
物語をつぶさに観察して、世界やキャラの深みを掘り下げていくことに特化しています。
※筆者個人の考えに過ぎませんので、参考程度にお読み下さい。
※共感の他、間違いや別な意見などもあれば、
遠慮なくコメントして(本ページ下部から)頂ければ幸いです。
※最終話までの視聴を前提に書いています。ネタバレ必至です。
作品の公開順に追っています。
ここでは、第7話Bパートの中盤その2(七島の赤い根侵食エリア)について。
過去の記事はこちら。

第7話 Bパート 中盤 その2
※以降のセリフの引用(❝ ❞内)は、全て
『ケムリクサ』第7話(©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト) を出典としている。
壁の向こうの光景
壁の向こうには、ようやく掴んだ希望を粉々に砕くような、
悪夢のような光景が広がっていた。
りんのとっさの行動
それはもう、瞬時に「危険」とわかる光景だ。
とっさにりんが、みどりの葉を取り出し、構えてしまったくらいだ。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
直後のシーンでは、この取り出したクサは持っていないので、すぐ戻したようだ。
葉を手に持つのは、剣にしたりビームにしたり、中~遠距離攻撃をする場合である。
この瞬間は本能的に「近づかずに攻撃」と判断し、体が勝手に動いたのだろう。
わかばの反応=視聴者の反応
陸一面が赤霧で覆われ、
切れ目からは赤い根が血のように伸びてきている。
その下に見える陸地には、一面無数の大型赤虫で埋まっている。
みどりの根は無残に破壊されつつあり、
それに支えられる地盤と壁も、崩壊していく。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
まさに、絶望そのもの。
初見の私は、わかばと同じような表情で見てました。
多くの視聴者は、そうだったのではなかろうか。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
りんの怒り
りんは、その後少し呆然としている。
目の前の光景に呆気にとられて、言葉も出ない、という様子だ。
だがそこで、わかばの言葉をきいて我に返る。
わかば「これ… このまま行くとさっきの水場まで…!」
りん「……!」

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
言い終わる前に、りんの目に怒りが宿る。
壁内の拠点は、やっと見つけた新しい水場であり、りつとりなが安心して暮らせる場所。
それが脅かされているということを、わかばの言葉で初めて気がついたようだ。
怒りの背景
姉妹を失いながら水を探す旅をし、
やがてはそれを諦め、一島で緩やかに死にゆくことを決意するに至ったが、
最後の望みを懸けて再度旅立った今、
ようやく悲願の「湖」にたどり着くことができた。
「残りの時間、りなや姉さんたちには、好きなことをして欲しい。」
これは2話のりんの言葉だ。

【出典】『ケムリクサ』第2話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
旅立つ前から、恐らくはそのさらにずっと前から、
りんは残された姉妹の安全を願って、生きてきた。
だが、ここに来て、りんに重い事実が突きつけられる。
「そんなものは最初から無かった」
という、無慈悲な現実だ。
辛すぎる。
ここまでの苦労が、今まさに水泡に帰そうとしていることを実感し、
りんは、とてつもない無念に襲われたことだろう。
悔しい。とにかく悔しい。
その悔しさが大きすぎたためか、
あるいは、呆気に取られて一時的に理性を失っていたためか、
この直後りんは、怒りの感情に任せて行動を取る。
明らかに冷静ではない。
4話では、ヌシと対面しても、一旦は退く判断をしていたというのに。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
怒りに身を任せる、りんの胸中は…
何も言わず、赤虫の大群に向かっていったりんだが、
このとき何を思っていたのか。
その怒りの度合いを、我々いち視聴者が、少しでも推し量るには、
直後の言葉から推察するしかない。
りん「こいつのせいで!」
りん「くそっ…! くそ!!」
言葉にならない憤りや苛立ちが、胸の奥から滲み出てきているかのようだ。
もし1話のように、りんの心の声がここでも聞けたとしたら…?
果たして、どれほどぐちゃぐちゃにかき乱された感情を聞き取れたであろうか。
それをここで言葉にしようとしてたのだが、文字通り言葉にできない。
というより、私ではどう書いても安っぽくなってしまい、書けない。
「考察」などと掲げておきながら、丸投げで申し訳ないが、
この言葉にできないほどの怒りは、各々で想像してみて欲しい。
鬼気迫るりん。だから辛い。
こうした激情の中、りんは、
自分たちの障害として現れた、目の前の赤虫たちへ、全力で攻撃を仕掛けた。
近づくムシから見境なく倒していくりんの姿は、鬼気迫るものがある。
りんの戦闘を見慣れてきたはずのわかばも、驚いているほどだ。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
この通り、このシーンは、何度見ても辛い。
それは、ここまでの道のりや苦労を追って見てきたからであるし、
りんがどんな想いでここまで来たかを見てきたからでもあるのだ。
崩壊していく壁は、どの部分か
みどりの木が崩れていくのと同時に、壁も少しずつ破壊が進んでいるようだ。
しかし、壁のどの部分が崩れているのかは、はっきり描写されていない。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
赤虫たちがかじりついているのは、みどりの木が地に伸ばしている根の部分のようなので、
恐らくは、壁の下側が崩れてきているのだろう。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
これはつまり、
壁を直接固定しているのは、島の地盤ではなく、
みどりの根である、ということにもなる。
壁が地盤に直接固定されているなら、根を食いちぎられても、壁は崩壊しないはずだ。
過去に、七島の地盤は大きく沈下していることを考察したが、
壁はもはや、沈下した地面には追従しておらず、木の根に固定されているのかもしれない。

壁そのものは、重力に従って落ちる物体であるようだが、
壁の大部分が根に支えられているなら、壁の下側が崩れたとしても、
壁の高さが下がったりは、しないことになる。
ということは、下側の崩れ方が広がれば広がるほど、
それは隙間、もしくは穴となり、
そこから大量の赤霧と赤虫が入り込んでくることになる。
壁が崩され始めていたこのときは、
もはや一刻の猶予もない状態だったのかもしれない。
であれば、出発を急いだことにも、合点がいく。
赤い根の仕組み
赤虫を生み出す?
成長した赤い木の根から、新たな赤虫が生み出されている様子が描かれている。
しかも「赤虫の幼虫」とかではなく、いきなり大型が出てきた。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
もしかしたら、これが幼体なのかもしれないが…。 幼虫のような体型してるし。
これまでに出会ってきた小型の赤虫は、
元々船内にいたロボットたちが、赤霧の影響で赤虫化してしまったらしい。(8話)

【出典】『ケムリクサ』第8話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
であれば、ここの赤虫たちも、もしかしたら赤い木が生み出したわけではなく、
赤虫化させたロボットたちを、赤い根を通して転送させてきているのでは、
という可能性も考えられるわけだが…。
12話から、赤い木は、ヌシの能力をコピーできるらしい、ということがわかっている。
(空橋ヌシのビーム砲、九島ヌシの壁生成能力)
これは、ヌシたちに何らかの干渉をしたことで獲得したものであると推測できるが、
そうであれば、他のロボットたちにも干渉し、個体としてコピーするのも、
容易いことだったのではないだろうか。
以上を踏まえて、赤い木は新規の赤虫を生み出せる、と私は推測している。
ケムリクサが新たな生命を生み出す、という点については、
わかばやりんたちの存在を見る限り、
何かしらの方法で「可能」と考えて何ら問題はないだろう。
根にも感覚と意思がある?
りんが赤い根を攻撃した途端、
他の根が、明らかにりんを狙って攻撃をしてきた。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
12話では、「強く使ったケムリクサから反応する」という性質を見せていたが、
これは通常時の基本的な行動原理なのだろう。
その上で、「根が攻撃された際には、その障害を排除する」という性質も
持ち合わせている。
これは8話でも明確に描写されることになる。
ここでは、根を一刀両断したりんを、自らの障害と判断し、攻撃してきたのだろう。
「攻撃された」という察知と、「排除すべき障害」の認識。
まるで根の一本一本が、自律し、感覚と意思を持った生物であるかのようだ。
りつが、遠くのみどりの根で察知し、操作するように、
赤い木の幹が、それと同様のことをやってのけているのかもしれない。
だとすると、知能がかなり高いのでは…?
ついにほぼ取れてきた、わかばの拘束
りんに赤い根のことを伝えるために、根を滑り落ちながら、
頑張って降りてきたわかば。
このとき、根との摩擦によってか、拘束の名残の腹巻き(?)が、ほとんど取れた。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
ずるりと落ちて、一本だけが残っている。
全て取れるのは、もう少し後。
わかばに身を預ける、りん
赤い根の攻撃に対し、身構えるりん。
この直後、横からわかばが割り込んでくるのだが、
その瞬間、りんはそのことに気づいており、
気づいていながら、そのままわかばに防御を預けている。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
わかばがりんを守ったのは、これが初めてである。
りんの運動能力なら、接近しようとするわかばを止めることもできたであろうが、
それをせず、わかばに防御を任せたのは、
既にお互いが信頼関係にあることの表れであろう。
わかばは、正体不明の赤い根に怯えることなく、動きにも表情にも、迷いがない。
最初からこうするつもりだったような覚悟を感じる。
一瞬のシーンだが、
ここで、わかばがりんを守り、りんはわかばに守ってもらった、という事が、
この後にも繋がってくる、非常に重要なことなのだ。
りんの表情が隠れていたのは…
一度退くことにして、みどりの根の上に戻った二人。
このとき、りんの表情が影で隠れていて、見えない。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
少しメタフィクション的な観点からの考察になるが、
『ケムリクサ』という作品内において、
「りんの表情をあえて見せない」ということが多々見られる。
「はじまり」のラスト、1話のりなこ死亡直後、りなよ拘束時などのシーンが、それだ。
そしてその「見せない表情」とは、「笑顔」と「泣き顔」。
「笑顔」を見せないのは、「ラストはりんの笑顔で終える」という、最高の結末を演出するため。
「泣き顔」を見せないのは、強い自分を演じようと無理をしていることを、
視聴者である我々にすら察しにくくするため。
※これらは私個人の見解にすぎないのだが、
こんなこと今更言わなくても、ほとんどの方々は、
なんとなくそんなようなことに気づいているものと思われる。
話を戻そう。
ここでりんの表情を、あえて見せないのも、同様の理由であると私は考えている。
隠れている表情は、もちろん「泣き顔」だ。
怒りに任せて攻撃を仕掛けたものの、
結局自分にはどうすることもできない。
りつやりなが安心して暮らせる場所を、守ることができない。
やり場のなくなった怒りと、どうしようもない無力感から、
このときりんは、悔し涙を流していたのではないだろうか。

【出典】『ケムリクサ』第7話 ©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト
そして、これはさらに個人の希望的観測になる。
りんが泣いていたとして、
このときわかばなら、りんの涙に気づいていたかもしれない、
と考えている。
気づいたからこそ、この後のわかばの進言に、
より強い意志を乗せていたのかもしれない。
そうだとアツいな、という、
本当に私個人の希望的観測である(笑)。
次回、第7話 Bパート 終盤!
辛い!
ここのりんの気持ちを慮るのは、本当に辛かった!
考察すればするほど、押しつぶされそうになっていた。
しかしようやく越えることができそうだ。
次回!
わかば!あとは頼んだぞ!

ここからも引き続き、お付き合いいただけると、幸いである。
もしよければ、右のプロフィールや、記事下のフォローボタンを押してもらえると、タスカル。
筆者のやる気が上がり、更新頻度が早くなります。

コメント