アニメ『ケムリクサ』の考察をしていきます。
内容としては、裏設定とか、各要素のモチーフなどを考えることより、
物語をつぶさに観察して、世界やキャラの深みを掘り下げていくことに特化しています。
※筆者個人の考えに過ぎませんので、参考程度にお読み下さい。
※共感の他、間違いや別な意見などもあれば、
遠慮なくコメントして(本ページ下部から)頂ければ幸いです。
※最終話までの視聴を前提に書いています。ネタバレ必至です。
作品の公開順に追っています。
ここでは、第7話Bパートの中盤(七島壁内から赤い根侵食エリア直前まで)について。
過去の記事はこちら。
第7話 Bパート 中盤
※以降のセリフの引用(❝ ❞内)は、全て
『ケムリクサ』第7話(©ヤオヨロズケムリクサプロジェクト) を出典としている。
一島を出発した頃を思い返す、りん
りん「考えたら… 一島を出る決意をしてなければ、
これは無かったんだな…。」
りん「ここにたどり着けたのも、お前が少しきっかけになっている…。
その… 礼を言う…。」
ひとまずの目的を達成した安心からか、感慨に浸るりん。
「一島を出る」という過去の選択が、間違っていなかったことを実感し始めた。
過去を引きずってばかりだったりんにとって、これは非常に大きな出来事だ。
わかばの影響力を「少し」、と控えめに言ってはいるが、
おそらくわかばがいなければ、りんは一島を出る決意はしなかっただろう。
また、わかばがいたからこそ、ここまで何も失わず来れたのも、確かだ。
姉妹の位牌(黒水晶)、ヌシに狙われたりなむ、電車の修理、
新しいアイイロ、七島の壁の開通…。
これら全て、わかばのおかげで、なんとかなっている。
りん自身、本心ではそう感じているのだろう。
だからこそ、わかばに面と向かって、改まってお礼を伝えているし、
よく見ると実は赤面している。
カメラもっと寄ってくれよ!!
「新しいことをする」、「新しいところにいく」、
という勇気が持てなくなっていたりんにとって、
「無事に目的を達成できた」、という実績は、
次の行動の自信へと繋がる。
そして、それを支えてくれたわかばの存在は、
姉妹たちと同じくらい大切なものに変化してきている。
簡単に言うと、
わかばがりんに、勇気を与えてくれた、
ということだ。
ちなみに、当のわかばは、
自分は何もできず、助けられてばかり、と考えているようだ。
わかば「いやあ、道中、りんさんがたくさん戦ってくれたからで…」
勇ましくなりつつある、わかば
わかば「まただ…!」
りん「なにか…!?」
わかば「行ってみましょう!」
再び轟音。
今度は、地面が揺れるほどだったので、りんにも気づいたようだ。
少しうろたえるりんに対し、わかばの「行ってみましょう!」という強気の発言!
そして自分が先行する。
なんと勇ましい。
わかばが先行したのは、いざとなったら、盾(アオイロ)でりんを守るつもりだったのだろう。
実際、この後そうしている。
出てきたての1~2話のわかばは、ここまで勇ましくはなかった。
りんたちの助けになりたい、という一心で、成長しているということか。
壁を突き抜ける枝
わかば「へえー こっちも高いですね。
枝に固定されてるのかな?」
「枝に固定されている」と、わかばが推測したのは、
「そう見えたから」に他ならない。
こちら側は、地盤がほとんど無く、
壁の最下部を確認できないほど高い位置で、
枝は壁を突き抜けているように見えたのだろう。
わかばの目線の先には、壁を貫通する枝があったであろうことが、
後のシーンからわかる。
壁と枝の順序についてだが、
壁が先にできて、その後成長した枝が、壁を貫通したはずだ。
しかし、壁が破壊されたような形跡は、見当たらない。
つまり、壁はみどりの木だけは無条件で通過できるよう、
設定されていたのかもしれない。
その理由はもちろん、木の成長を妨げないためだ。
枝が壁を貫通できる表現?
…と、この推測で一つ思い出したことがある。
これはさすがに、作画のミスだと思っていたのだが…
りんたちが壁を通過するときに、みどりの木は壁に埋まりながら進んでいたのだ。
BDでは修正されると思っていたのだが、それも無かったので、
“あえて”そうしているのだとすると、
これが、「みどりの木は壁を通過できる」という事実を表していたのでは…?
と深読みしてみたり。
だが、こんなぬるりと通過できてしまっては、
そもそも枝が「壁の支え」になりえないので、
これはさすがに考えすぎだろう。
いずれにしても、
枝は壁を通過でき、そのまま壁を支えられる、
という推測は、ほぼ間違いないと思われる。
壁は湖と大木を囲うように形成されている
りん「これも入ったところと同じものか?」
わかば「見た目そう見えますね。」
壁が大木を守るよう囲っていなければ、そもそも意味をなさないので、
その点から推測できた話なのだが…、
ここのりんたちの発言から、その裏が取れた、と言える。
もし別な壁だったなら、「ここにも壁が?」とでも言いそうなところを、
「同じものか?」と発言していることから、
同じ壁が、反対側まで続いているであろうことがわかる。
壁のどの辺を見て「同じ」と判断しているのかはわからないが、
映像上で見ても、壁の質感は同様であるように思う。
好奇心が勝るわかばと、信頼を示すりん
わかば「同じ方法で開けられると思うんですけど…。
ちょっと、開けてみていいですか?」
りん「やれよ…。」
汗を垂らしながらの提案
わかば、顔は笑っているが、汗を垂らしているのが見える。
壁の向こうの驚異を予測して恐怖している、とも取れるが、
直後に壁を通る時の、脳天気なわかばの様子を見るに、
開けて即、驚異を目の当たりにするとは、思っていなかったようだ。
わかば「おお!開いた! へぇ~! へぇぇ~!」
とすると、このときの汗は、
りんに怒られるかもしれない恐怖、だったのかもしれない。
今まで何度か、何らかの提案はしてきたので、
提案することそのもの、というよりも、
せっかく安全を確保できた壁内を、わざわざ開いてしまう、という行為が、
りんに怒られるかも、と思ったのかもしれない。
「開けられると思うんですけど… ちょっと開けてみてもいいですか?」
と、好奇心が勝って、内心ドキドキしながら聞いているかのようだ。
静かに許可するりん
それに対するりんの回答は、たった一言だが、
これまでの旅路で培ってきた、わかばへの信頼を、
ひしひしと感じられる。
口にはしていないが、
「お前のやることなら、大丈夫」
と、言ってくれているかのようだ。
「開けてもいいけど、気をつけろよ?」
とかではなく、
「やれよ」
という、一言。
一言だからこそ、深い…!
壁は入り口側より薄い?
ここの壁の厚さは、入り口側の厚さに比べると、だいぶ薄い。
入り口側は、少なくとも電車の車体が入り切るほどの厚さがあったようだが、
こちらは、数歩分で越えられる程度の厚さしかない。
演出上の都合、といえばそれまでだが、
真面目に考えるなら、
赤い木側の壁の方が薄い、とは、どういう理由だろうか。
赤い木と反対側の守りが堅い理由
赤い木と反対側には、
壁を作ったワカバにとって、
よほど守りたいものがあったということではなかろうか。
それはもちろん、一島に逃したりりの事だ。
ワカバ自身が赤い木に対抗するには、そこまで厚い壁でなくても十分と判断したが、
もし対抗策が失敗し、赤い木を止められなかったら…?
りりだけは守らなければ、と判断したワカバは、
後方の壁は厚くし、さらにはるか後方まで、何重にも壁を形成した。
補足:七島以外の壁が薄いのは?
これは、11話の考察時にさらに詳しく語ろうと思うが、
七島以外の壁が薄かったのは、
元々作業中に作ってあった透明の壁を、
青い壁に再構築したためではないかと考えている。
ワカバから遠く離れた地にも壁を形成できた理由にもなる。
図解
わかりづらいと思うので、
例のごとく、簡略図にしてみた。
次回、第7話 Bパート 中盤2!
中盤がさらに、二部構成化してしまうのだが、
図解やらなんやらボリュームが増えてしまったし、
この後のシーンは書くことが多そうなので、一旦ここで切ってしまうことにする。
「中盤2」て。
次回!
りん、怒る!
ここからも引き続き、お付き合いいただけると、幸いである。
もしよければ、右のプロフィールや、記事下のフォローボタンを押してもらえると、タスカル。
筆者のやる気が上がり、更新頻度が早くなります。
コメント
壁の厚みの違い、なるほど!と思いました。
でもムシが木をかじって壁の破片が落ちてくる描写があるので、ワカバが壁を作った時よりさらに薄くなったんだと思います。
コメントありがとうございます。
そうですね、壁の一部が落ちてきている描写については、もちろん把握しています。
おっしゃるとおり、壁が力を失い薄くなってきているのでは… と、
実は最初書こうと思ったのですが、
それだと、二島手前で見たような壁の崩れ方にはならないかな? と考え、
結局このような発想に至りました。
更新お疲れさまです。 また認証の変更ありがとうございます。
異音と振動を確かめるため安全な閉鎖空間の壁に穴を開いていいか聞くわかばと、りんがわかばを同じ立場の仲間として信頼して発言する関係性が良いですね!
関係性が上でもなく下でもなく、相手を思いやる気持ちを演技にのせる監督ならでは!という感じが素晴らしいです!
壁の分厚さの差はugさんの考察を見るまで考えもしない視点でした。確かに!
島と壁についてですが、
1)島ごとに分けている透明っぽい壁
・・・・これは島を囲う形で建てられている?(島の区分方法など)
2)りりを安全に守るため、ワカバが建てた壁
・・・・島の真ん中を2分する形で建てられている?(1島の壁広場など)
◇ugさんの考察とは違う形ですが、1)と2)の壁は別なのではないでしょうか。
りつ姉の地図の島の構成物のかたまりを見るに、かたまりを中心とした外周に1)の壁があり、2)の壁はそれとは別に、青い断面で島の中心辺りを横断しているように見えました。
もし1)と2)が同じであれば、1島が壁広場で2島と区分けされてしまう事に。。。
ありがとうございます。
透明な壁と、青い壁が、本質的に同様と判断したのは、
11話で、りりが一島に飛ばされた後に、壁が形成されていた描写から判断していますね。
あそこで青い壁を作って、ワカバ以外通れなくしたみたいだけど、
11話前半で登場していた、「島を区分けしていたような透明な壁」は、どこいった? と。
「透明な壁」についての、明確な描写や発言が、11話以外では見られないので、
「透明な壁」は、「青い壁」になったのでは? という発想に至りました。
おっしゃるとおり、全く別物であるという可能性も大いにあります。
特に、一島の壁広場にあった、既に朽ちていた壁は、
区分けの位置としては不自然なので、
あのとき新たに建てた壁なのかもしれない。
結局この壁は、10日足らずで赤霧によって破壊され始めました。
最近公開された、「.x話まとめ」のDVDのパッケージ絵では、
背景に透明な壁が描かれていましたが、
あれは、壁広場の壁が、破壊されて「防壁」としての機能を失いつつあったものなのではないかな、
と、勝手に解釈しています。
依然、謎が多いです。
解説図つきの考察わかりやすかったです!壁の薄さの違いは気付きませんでした…
命をかけてまでみどりを生やしたのは水回収のためだったようなので、壁が薄い方は水回収の時間稼ぎ程度にしか考えて無かったんじゃないかとも思いました。どちらにせよりり絶対守るマン…!
ありがとうございます!
確かに最初から生きて戻れるとも考えてなさそうなので、
木を成長させるまでの時間稼ぎだったというのも、あり得ますね。
演出上の都合で薄かっただけなんでしょうけど、真面目に捉えると、
色々と考えられて面白いですねえ。