未知へのロマンと 数多の伝説を餌に
その名にふさわしい数の人々を呑み込んできた大穴…
大穴の名は『アビス』という
全て踏み明かされたこの世界の 唯一最後の深淵である
【出典】『メイドインアビス』1巻 ハローアビス01より ©つくしあきひと/竹書房
“冒険”、好きですか?
私は大好きなので、国内でも海外でも、よく一人で旅をします。
もちろん本やアニメ、ゲームの世界の冒険も大好きです。
そんな冒険好きにオススメしたいのが、ファンタジー漫画『メイドインアビス』。
【出典】『メイドインアビス』1巻 ©つくしあきひと/竹書房
2017年夏にアニメ化、2019年1月には劇場版アニメも上映し、
アニメ二期の制作も決定している、人気作品。
読んだことないけど興味がある人にも、
アニメや映画だけ見て続きが気になる人にも、
ここで『メイドインアビス』の魅力をお伝えしていく。
重大なネタバレは無いので、安心して見ていってもらいたい。
ぶっとんだ舞台なのに、とってもリアル
ぶっとんだ舞台、環境
舞台は、孤島で発見された大穴、その入り口の周辺の街から始まる。
街は大穴に挑む『探窟家(たんくつか)』たちの拠点。
そして主人公は、その街で暮らす、見習い探窟家の少女『リコ』と、
彼女と出会った謎のロボット少年『レグ』。
【出典】『メイドインアビス』1巻 ©つくしあきひと/竹書房
『ファンタジー』とは言っても、よくある「剣と魔法の世界」ではない。
この世界の人間たちには特殊な能力などなく、現実の我々とほとんど変わらない。
「未知の大穴がある」。
冒険の舞台環境その一点のみ、ぶっとんで異常なのだ。
※ロボット『レグ』については、ロボなりの能力が多少備わってはいるが、
大穴の異常性の前には、実に矮小なものである。
なのにとってもリアル
しかしなぜかこの異常な舞台での冒険のはずが、妙にリアリティを感じることができる。
この理由の一つが、「生理現象」の細やかな描写にあると思っている。
現実では必要不可欠である一方、通常のファンタジーものでは省かれるのが普通なのだが、
この物語ではそれらを省かない。
時間が経てば腹が空くし、食べる飯の見た目や味についても描写し、
食べたらやがて排泄もするし、
長く冒険を続ければ老廃物で汚れ、体臭もキツくなる。
「リアル」というより、表現が「生々しい」と言うべきか。
【出典】『メイドインアビス』2巻 ©つくしあきひと/竹書房
そして「怪我」や「体調不良」の扱いは、実に重い。
「かすっただけだ」だの「肋骨が2,3本折れた」だのは、この物語では重篤に陥りかねない。
しかしそれも現実では当たり前の話。
旅先で骨が折れても変わらず旅程を続ける人なんて、いませんよね?
怪我をしたら、治療が必要だし、回復するのに長期の休息が必要になる。
怪我の度合いによっては、元通りにはならないかもしれない。
環境はぶっとんでるのに、
そこを冒険するのは、現実の我々と同じく弱く脆い人間。
すると読み手側からすると、めちゃくちゃハラハラする。
「冒険」というありふれたジャンルが、ものすごく大変なことだとわかるし、
怪我なんてされると、直視できないくらい見ていて辛い。
節々の描写がリアルだからこそ、より感覚的に苦痛が伝わってくるのかもしれない。
アニメ、あるいは漫画3巻あたりまで見た人なら、このことは嫌というほど知っているだろう。
【出典】『メイドインアビス』2巻 ©つくしあきひと/竹書房
↑極度の疲労による汗、焦点の合わない目、呆けた表情、力の抜けた肩…、
疲労感一つ取っても、描写が細かい。
リアルだからこそ、強烈に引きつけられる
それでも未知へ、未知へと突き進んでいく少女『リコ』を見ていると、
恐ろしくてたまらない。
そしてだからこそ、
彼女の勇敢さが引き立つ。
「好奇心」それのみで「未知の恐怖」に挑んでいく姿に、読者は憧れを抱く。
見習い探窟家だったはずの少女が、
「知恵」と「機転」で危機を切り抜けていく成長に、感動を覚える。
それを全力で支えようとする弱虫レグを、応援したくなる。
【出典】『メイドインアビス』3巻 ©つくしあきひと/竹書房
↑実はアニメ9話の内容は一部オリジナルで、原作のリコは賢く、機転を効かせているので、
未読の方は必見。
リコは、ネット上ではなぜか無条件で「さん付け」されていることが多いが、
「我々読者にはとても真似できない勇敢さ」を見せつけてくれるからかもしれない。
世界観が天才的。しかも次々に変化していく
巨大なのに細かい世界観
序盤でいきなり、大穴『アビス』の全容をドーンと見せられ、
読者は「なんじゃこりゃあ!」となる。
デカすぎ深すぎ、そして細かすぎ!
【出典】『メイドインアビス』1巻 ©つくしあきひと/竹書房
確認できている深さでも、20000m!
現実の地球の最高点エベレストが約9000m、海底最深部のマリアナ海溝が約10000mなので、
エベレスト頂上からマリアナ海溝まで降りても、まだ足りない(笑)。
この超絶深い大穴の、この緻密な構成。
リコとレグは、実際にその場に降り立って冒険するわけだが、
するとさらにさらに細かい地形、生態、現象を目の当たりにできる。
【出典】『メイドインアビス』2巻 ©つくしあきひと/竹書房
作中通して可愛い絵柄なのとは裏腹に、
アビスの生物(モンスター)たちはグロテスクで、かつデザインが秀逸。
コミックスでは、話ごとの合間に、生物などの生態の細かな解説を確認できる。
特に、「食べられるか」の情報と、「危険度」の情報は重要。
こうした細かい情報が、物語をより深くしてくれる。
【出典】『メイドインアビス』2巻 ©つくしあきひと/竹書房
緻密な世界が、しかも移り変わっていく
そしてそんな異常な情景は、
階層が深まるごとに、ガラッと変化する。
今まで異世界のようなところにいたのに、
次はさらに異常な世界になっていく。
緻密さは変わらず、である。
この、巨大すぎるのに細かすぎて、しかも変わり続ける世界観(舞台)は、
天才的であるとしか言いようがない。
深くなるたびに変化する謎の症状『上昇負荷』
移り変わるのは、情景や生態だけではない。
アビス内で上昇するときに発症する謎の現象『上昇負荷』が、階層ごとに変化する。
【出典】『メイドインアビス』1巻 ©つくしあきひと/竹書房
登ったときの頭痛や吐き気…などというもので、
筆者も最初読んだときは、「高山病の誇大解釈かな?」、と思ったものだが、
そんな甘いもんじゃありませんでした。
ちゃんと練られてます。
しかし、序盤で『上昇負荷』の説明を受けても、その実態も驚異も、よくわからないのだ。
情景や生態をその場で目の当たりにして初めて知るのと同じように、
この『上昇負荷』の真実も、その場に行って初めて知ることになる。
ぼんやりとしか知らなかったことを、
実際に目の当たりにして、それが“経験“となる。
これぞまさに、「冒険」、「旅」の醍醐味であり、
この作品はそれを繰り返し提供してくれる。
今や、ネットで調べれば世界中ほとんどの様子が画像つきでわかってしまうのに、
それでも旅をする人はたくさんいます。
それは、その場に行かなきゃ得られない”感動“を求めているから、ですよね。
怖い、けど、読み進めるのは止められない
アビスへ探窟に出かけませんか? https://t.co/v2Ylxxars9 #miabyss pic.twitter.com/pG2hyGwHrZ
— TVアニメ「メイドインアビス」公式 (@miabyss_anime) February 11, 2019
アニメ映画化もした人気作品になったので、なんとなく知ってる人は、
「絵はかわいいけど、めっちゃグロい、怖い」とか、そんな印象を持っているかもしれません。
しかしこの記事を読んでくれたあなただからこそ、こう問いたい。
なんとなく知ってるだけでいいですか?
自分の目で確かめて、”経験“してみてはいかがですか?
「絵がかわいい」、「実は残酷」などは、表面的な部分に過ぎず、
この作品の本質は、もっと深いところにあるのです。
でもナナチはかわいいですね。
確かに怖い、恐ろしいというものも見せられます。
しかしそれでも、読み進めるのを止められない。
リコがアビスの底に底に進んでいくのと同じように、
読者も『メイドインアビス』という作品に深く深くハマっていく。
まだ読んでいない人は、是非読んで欲しい。
kindleなどの電子書籍でも読める。
漫画よりアニメから入りたい人は、Amazonプライムなどで無料で視聴することもできる。
30日間の無料期間でも視聴可能だ。
アニメ制作には、作者のつくしあきひと氏がガッツリ関わっているため、
作品の緻密かつ丁寧な内容を、しっかり表現できていて素晴らしい出来である。
3巻までの内容を、13話でじっくり濃密に作ってくれているのだ。
声優の演技も凄い。
アニメ視聴済みで、原作の続きが知りたい人は、4巻から読むといいだろう。
筆者にとっても今や、続きが知りたくてたまらない作品になってしまった。
アニメ二期も楽しみである。
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