アニメ『ケムリクサ』の考察をしていきます。
内容としては、裏設定とか、各要素のモチーフなどを考えることより、
物語をつぶさに観察して、世界やキャラの深みを掘り下げていくことに特化しています。
※筆者個人の考えに過ぎませんので、参考程度にお読み下さい。
※共感の他、間違いや別な意見などもあれば、
遠慮なくコメントして(本ページ下部から)頂ければ幸いです。
作品の公開順に追っています。
過去の記事はこちら。
今回は、本編公開前にTwitter上で公開された「0.7話」です。
0.7話
趣味のアニメ0.7話です #ケムリクサ pic.twitter.com/LCpT6cBRUg
— たつき/irodori (@irodori7) November 30, 2018
三島に初到達した4人。りょうがいなくなっている。
(これより先で引用しているセリフは、全て上記の動画「0.7話」のものである。)
りょうが死亡する。
りょうがいなくなっていて、
りんの袖が長くなり、両手にはりょうのグローブを装備している。
三島に到達する前に、りょうは死亡したということだ。
壁を破壊できるほど強いりょうが、なぜ死んでしまったのか。
各話の証言を元に、読み解いていこう。
三島までに二体のヌシと遭遇し、二体目に殺された
「りょうが1回だけヌシを倒している」(4話りな)
「2体目のヌシでうっかり」(9話りょう)
これらの発言から、二島から三島に到達するまでの間に、ヌシとは2回遭遇しており、
2回目にやられてしまったことがわかる。
そのとき、りんと二人で行動していた
「りんに看取ってもらって、死んだ」(9話りょう)
「みんなに」ではなく、「りんに」と言うことは、
その場にはりんしかいなかったことが推測される。
0.6話においても、りんとりょうは二人で探索しているようだった。
もしかしたら、0.6話はりょうが殺される直前だったのかもしれない。
そして、二体目のヌシに致命傷を負わされたりょうを、
りんが抱えてその場から逃げたのだろう。
本編4話以前には、りょう以外がヌシを倒したことはない。
つまり、りょうを殺した「二体目」は、倒せてはいない。
二島と三島の壁は、ヌシが破壊した?
第7話にて、七島の大木の前にあった「無傷の壁」を前にして、りつはこう発言している。
「これは穴が空いてないやつだから」
つまり、今まで「無傷の壁」と「穴の空いた壁」を見てきたということだ。
そして続けて、「壊したのは6人がかりだった。」、「最後にはりょうが壊した。」
と話していることから、
これまで「無傷の壁」は一島と二島の間だけで、それ以外は「穴の空いた壁」だったと推測できる。
つまり、二島と三島の間も「穴の空いた壁」だった。
りんたち以外で、壁を破壊しようとするのは、あかむしだ。
そして破壊できるほどのパワーがあるとすれば、ヌシだろう。
二島と三島の間の壁を破壊したヌシに、りんとりょうは襲われたのではないか。
同種のヌシに、同時に襲われて「うっかり」やられた?
それにしても、あれほど強いと言われるりょうが、ヌシにそう簡単にやられるだろうか。
気になるのが、先に挙げた「うっかり」というりょうの発言。
「うっかり」ということは、油断したのだろう。
何に?
例えば、
初めて遭遇した強敵である「1体目のヌシ」を倒せた「喜びと安堵」
とすれば、どうだろうか。
つまり、
「2回目のヌシ」が、1体目を倒した直後に現れた、
というケースだ。
それを「2回目」と言うのはおかしい、と思うだろう。
ここで考えて欲しいのは、「回」で話しているのは、りなだということ。
りなが「1回だけ(倒した)」という言い方に対し、
りょうは「2体目」という言い方をしている。
しかしりなは、分裂前の事はよく覚えていないと、たびたび自身で発言しているため、
「ヌシを1体だけ倒した」という事実を、「1回」と解釈し発言していてもおかしくない。
りょうの「2体目」という発言のほうが事実に寄り添っているとするならば、
同じ場面に、2匹のヌシがいた可能性も考えられる。
深読みしすぎかもしれないが、この仮説が正しいとしても、
それだけでりょうが「うっかり」やられるとは考えにくい。
2体目に不意打ちを食らったとするならば、
りょうは「ヌシは1体しかいない」と思いこんでいたはずだ。
りょうが感知に長けているのは、「におい」。
2体目のヌシが、1体目と同じ「におい」、つまり同種のヌシであり、
同じにおいのせいで、りょうの察知が遅れたとするならば、
不意打ちもありえるのではないだろうか。
その場には、「りょくの目を受け継いだりん」もいたはずだが、
戦闘に不慣れなりんは、気づくのが遅れた。
戦闘に慣れているはずの第4話でも、橋の上でヌシに不意打ちを食らっている。
結論:りょうの最期
ここまでの仮説をまとめて、筋立ててみよう。
りんとりょうは二人で二島を探索していたが、
三島との間の壁付近で、壁に穴を開けたヌシに襲われた。
りょうは、一体は倒すことができたが、
そこで油断して、同じにおいの同種の二体目のヌシに不意打ちされた。
りんはりょうを抱えて逃げ、りょうの死を看取った。
そしてりょうのグローブを受け取り、以降、装備している。
以上が、りょうが殺された状況の、私の仮説である。
余談:この後、六島に行くまでヌシには会わない
二島にヌシが現れたのは、異例中の異例である。
4話でヌシが現れた際、
りつは戸惑いながら「六島以外には出なかったはず」と発言している。
一方で、「りょうがヌシを1体倒し、2体目に殺された」のも事実とするなら、
これは「普通は六島にしか現れない」という意味の発言だろう。
この後、六島に行くまでに、ヌシに遭遇することはなかった、ということになる。
りんは、さらに警戒心を強めた
りん「二人共、危ないよ。」
みんなの安心をよそに、りんの表情は硬く、周囲を警戒している。
りょうの死が、りんをさらに用心深くさせている。
袖が長くなり、肌がさらに隠れているのも、一層警戒心を強めている表れだろう。
りんは「戦う力」を手に入れた
とにかく「頑丈」であるりんだが、戦いは好きではなかった。
しかし、りょうから受け取ったグローブが「戦う力」となる。
早い話が、防御力だけでなく、攻撃力も手に入れた。
このグローブは、ケムリクサの力を行使する媒介として、機能するようだ。
今後りんにとって主力の武器となる。
ちなみに、りょうはグローブではなく、
鉄パイプの先に結んだリボンを媒介にして、力を使っていたようだ。
二島の到達から、かなり時間が経過している
りつ「久しぶりの水だにゃ~。」
りつ「これでしばらく安心だにゃ~。」
二島到達時は、周囲に水があることを、りくが感じ取っていた。(0.6話)
しかし、三島に到達して「久しぶりの水」にありつけたようなので、
二島をほぼ探索しつくして、水もほぼ無くなった上で移動してきたようである。
水を収集できる「みどり」もまだ見つけていないので、
水のあるところを拠点に、各地を彷徨っているのだろう。
穏やかに死ぬことを望まない限り、
もはや探索しつくした一島に戻る選択は、ありえない。
りなは、食べるほど大きくなる(強くなる?)
りん「りな、少し大きくなった?」
りな「そうみたいだナ! もっとたくさん食べて、どんどん大きくなるナ!」
0.6話の時点では、戦闘向きではない様子のりなだが、
本編では、戦闘でも結構活躍している。
新しいものをたくさん食べることによって、
大きくなったり、分裂が可能になったりと、強くなっていったのかもしれない。
りなは、相手の感情を読み取ることに長けている
りな「そういうりん姉ねは、ちょっと元気ないナ?」
りん「…そう?」
りなは、味覚に長けていることと関係があるのか、相手の感情を読むことに長けているようだ。
「その場所の味がする」(4話)とも言っていたが、関係あるかは不明。
ともかく、現代人風に言うなら、「空気が読める」ということだ。
4話においても、会話の雰囲気が暗くなりそうなところを感じ取り、すぐに話題を変えてみせた。
「ムードーメーカー」の称号は伊達ではない。(公式HPより)
りなは、りんのように遠くが見えるわけではなく、
りつのように音で状況を察知できるわけでもないので、
状況を知るためには、周りの者の反応から、判断せざるを得ない。
そのため必然的に、相手を注意深く観察する能力が身についたのだろう。
例えば8話では、シロの仲間たちが赤い根を切る様子を、りんとわかばの反応から、判断している。
りなのアドバイス
りな「う~ん、りなたまに、あんまり考えないのも大事かもって思うナ。
好きなことからしてもいいと思うんだナ。
りな、おいしいものが好きだから、もっとおいしいものを探すナ。
そしたら、好きなものが増えるナ。 嬉しくてたくさん動けるな。
そしたら、姉ねたちの役にも立つナ。 なんと!いいことだらけなんだナ!」
好きなものがわからないまま、余裕の無い状況に追い込まれていっているりんを心配した、
りなのアドバイス。
やるべきこと、やらなきゃいけないことが増えると、いつしか「目的」を見失ってしまう。
たまには、やりたいことをやりたいようにやってみればいい。それが意外といい結果になる。
ということだ。
りんには、まずは「好きなこと」がなにかを見つけて欲しいりなだが、
結局このアドバイス通りに実行できたのは、最終話となった。
常に死線ギリギリだったから、仕方がない。
それでも見つかっただけ良かった。
アドバイスはさらに続く。
りん「好きなもの…。」
りな「ゆっくり探せばいいナ。
好きなものを見つけるのって、多分、嫌なものを見つけるより難しいんだナ。」
比較的早く好きなものが見つけられたりなにとって、「好きなものを見つける難しさ」というのは、
よくわかっていない。 「見つからない苦悩」を経験してないからだ。
ゆえに「多分」だ。
確証がないのに、それでもこの発言をしたのは、
「好きなもの」がいまいちわかってないりんの反応を見てのことだろう。
相手の反応を敏感に感じ取れるりなだからこその、フォロー兼アドバイスかもしれない。
ロゴの葉の二枚目が、色を失う。
2枚目の葉が色を失う。
りょうの死を表している。
次回、0.8話から
0.7話だけで長くなったので、一旦ここで終わる。
次回は、0.8話から。
引き続き、お付き合いいただけると、幸いである。
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筆者のやる気が上がり、更新頻度が早くなります。
コメント
新鮮な視点の考察で、楽しく読んでいます。
6島に行く前にりょうが死んでしまうと、3話の「ミドリちゃんに頼らないで戦うのがフェアだ」と言っていたセリフと矛盾するのではないでしょうか。
>リアタイ 様
はい!そのとおりでございます。
後に紹介しようと思っていたのですが、ここで簡単に私の考えを説明します。
その会話では、「りょくのおかげで、みどりちゃんの育て方がわかった」とも話しています。
しかし、りょくは五島に到達するよりずっと前に死んでいるはず。
りょくがケムリクサについて調べる中(おそらく、りりのメモ)で、「ミドリイロのケムリクサ」があることも知り、姉妹に情報共有します。
ミドリはあかむしに対する武器になるから見つけよう、とかなんとか。
それを聞いたりょくが、「それに頼らず戦うほうがいい」と返した。
これなら、りょうが六島に到達していなくても、辻褄が合うのではないでしょうか。
ケムリクサ考察記事、楽しく拝見させていただいております。
特に時系列や地理的なまとめが分かりやすく「なるほど!」と膝を打つばかりです。
>例えば8話では、シロの仲間たちが赤い根を切る様子を、りんとわかばの反応から、判断している
気づきませんでした!見直してみたら確かにりなはわかば達を見て反応してました……。
登場人物の特徴、性格を本当に丁寧に描写しているのが分かりますね。
映っていないだけで、画面外でも誰が何をしているかまで考慮して制作されているのではと感じました。
1話以降の考察記事も予定されているとのことで、とても楽しみに待ちつつ陰ながら応援しております!
>名無し 様
お褒めのお言葉、ありがとうございます。
こちらこそ、お読み頂いたことに感謝です。
そう。登場人物たちは、まさに生きているようなんです。
著名な作家さんたちは、物語を作るときに、「キャラクターが勝手に動き出す」と言うのはよく聞きますが、
『ケムリクサ』もまさにそうなんでしょうね。
世界の中の、ほんの一部を、我々は俯瞰で覗いているような、そんな感覚です。
自分も、一緒に旅をしているような気持ちで、考察しています(笑)。
是非とも、引き続きよろしくお願いします!