満を持して、2020年10月から、アニメ化!
【 発 表 】
アニメ「不滅のあなたへ」
Eテレ 2020年10月放送開始(予定)話題作「聲の形」を生み出した漫画家・大今良時さんの初テレビアニメ化作品で、不死身の主人公・フシを通して生き方を探すファンタジー。#大今良時 さんからもひとこと▼https://t.co/Ejdt0wCSN6
— NHKアニメ (@nhk_animeworld) January 9, 2020
連載開始当初から追っていたので、嬉しいお知らせである。
そんな私が、『不滅のあなたへ』の魅力を、重大なネタバレなしで、お伝えしていく。
どんな物語?
冒頭を試し読みができるので、まずは読んでみるのが早いと思う。
物語の主人公は、「不死の存在」
主人公は、人間ではない。
動物でも、そもそも生物であるかも怪しい。
なんと最初は、無機質な球体なのである。 意識すら持っていない。
この、最初は球体の主人子の持つ能力は、「不滅」であること。
また、外から刺激を受けて、そのものの姿形をコピーできること。
そうして、地球のような星に放り込まれた球体は、
まず石に、次に苔に、その次はオオカミに、と姿を変えていく。

【出典】不滅のあなたへ(第1巻) ©大今良時/講談社
まるで生命の進化を一人で追っているようである。
次第に、「意識」や「感情」など、形にし得ないものも獲得していく。
はじまりは、人の「願い」に触れたこと
狼となった“主人公”は、やがて雪原の村に一人残された少年と出会う。
少年は、ある「願い」を持っていた。
それは、「村を出て広い世界を知りたい」ということ。

【出典】不滅のあなたへ(第1巻) ©大今良時/講談社
しかし、少年は願いを叶えることができず、志半ばで命を落とすこととなる。
奇しくも主人公(狼)は、少年の死に目に立ち会うことになってしまった。
そこで、少年の最期の想いを受け取る。
それは、「自分の事を、ずっと覚えていて欲しい」という願い。
それを聞き入れるかのごとく、主人公は、絶命した少年の姿を獲得する。

【出典】不滅のあなたへ(第1巻) ©大今良時/講談社
そしてまるで、少年の叶えられなかった「願い」を受け継いだかのように、
世界に旅立って行くことになった。
これが物語のはじまりとなる。
不滅である主人公は、「死」すら経験の一つとして、生き続ける。
こうして始まった旅の中で、様々な人に出会い、別れ、多くのものを獲得し、
主人公が何を成し遂げていくのか見届けるのが、
この物語の見どころである。
「感情」を兆しに成長するキャラクター達
物語の見どころは、
不滅の主人公”フシ”と関わった人が、
「感情」を大きく揺り動かし、「成長」「変化」していくところだ。
『夢』を持った人たち
出会う人は様々で、特異な環境で生き抜いている。
そして彼らはみな、「夢」を持っている。
村の生贄として捧げられる「大人になり母になりたい」少女。

【出典】不滅のあなたへ(第1巻) ©大今良時/講談社
怪物と呼ばれる「家族を持ちたい」孤児。

【出典】不滅のあなたへ(第3巻) ©大今良時/講談社
無秩序な監獄島で暮らす「作家になりたい」少女。

【出典】不滅のあなたへ(第5巻) ©大今良時/講談社
始まりは偶然だったり、成り行きだったり、敵だったり、これも様々。
その誰もが、何かしら「夢」を持っており、フシと深く関わっていく。
みんなカッコいい
その「夢」を叶えようと、皆日々を生きている。
そこんところの背景を、じっくりしっかり丁寧に描いてくれているので、
ガッツリ感情移入できるようになっている。
「夢」がどれだけ本人にとって尊いものか、よーくわかったところで、
しかし彼らは、その「夢」とは真逆の行動を、我々に見せてくれるのだ。
「夢」とは違う「大切なもの」。 言わば彼らの「信念」。
そのために、ときには命も賭ける。

【出典】不滅のあなたへ(第3巻) ©大今良時/講談社
フシと出会ったことがきっかけなのか、
始めは単純に漠然と追っていた「夢」ではなく、
その過程で持ち得た「信念」に基づいて行動を起こす。
この「変化・成長」を見るのが、実に痛快。
簡単に言うと、みんなカッコいいのだ。
“フシ”もカッコいい
「成長」するのは彼らだけではない。
関わったフシ自身も、彼らから学び「変化」「成長」していく。
短編集的に、舞台と登場人物は変化していくが、全てがフシに蓄積されていく。
始めは動物と変わらないが、徐々に言葉を覚え、感情表現も豊かになっていく。
やがて「死」という概念も知るし、
命を賭ける人間の「誇り」にも触れ、悩み、葛藤を繰り返す。
カッコいい人間たちに関わって、”フシ”もカッコよくなっていく。
これがまた痛快。

【出典】不滅のあなたへ(第4巻) ©大今良時/講談社
作者おなじみ、「感情」の描写が細やか
「感情」が伝わってくる描写
劇場版アニメでも有名な『聲の形』が代表作となる作者”大今良時“氏。
今作も、「人との関わり」、それによる「感情の変化」の描写が、
非常に細やかで秀逸であると感じる。
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【出典】不滅のあなたへ(第2巻)/大今良時
他者の命を利用しようとする女性と、それに理不尽を感じる少女。
女性は、少女からの明確な”失望”を感じ取り、動揺し、葛藤する。
微妙な表情の変化、構図、タメが、息が詰まるように張り詰めたシーンを作っている。
本作において「感情」は重要なポイントとなっているため、
この高い表現力は、物語に深みを与えてくれる。
ワンシーン毎に、揺れ動く感情を読み取るのが、非常におもしろい。
バトルシーンだって、大迫力
『聲の形』ではあまり見られなかった激しいバトルシーンのスピード感、迫力の描写もある。
特に”フシ”は、死なないチートキャラなので、
体ごと吹っ飛ばされても、オオカミに変化しながらカウンターしてきたり、と、
実にダイナミックな動きを見せてくれる。

【出典】不滅のあなたへ(第1巻) ©大今良時/講談社
こうした激しいシーンはむしろ、
大今良時氏のデビュー作『マルドゥック・スクランブル』を知っている人ならば、おなじみだろう。
(こちらもめちゃくちゃおもしろいので、オススメ)
とりあえず、4巻くらいまで読んでみよう
様々なヒトの「信念」を目の当たりにし続け、不滅の存在はどう「変化」していくのか。
「命」の重さ、「信念」の尊さ、生きることの意味。
壮大で、深く、考えさせられてしまう、文学的な漫画である。
続きが気になって仕方がなくなる。
とりあえず、4巻くらいまで読んでみることをオススメする。
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