もしも、肉食動物と草食動物が、
共に暮す社会があったら…?
トラもウサギも、
トリもクマも、オオカミも。
動物たち本来の習性や性質を受け継いだまま、
我々人間と同じように生活していたならば、
一体どんなドラマが生まれるだろうか。
『BEASTARS(ビースターズ)』では、
そんな異世界を、リアルに描いていくれている。
「マンガ大賞2018」の大賞に輝き、2019年にアニメ化も果たした本作品の魅力を、
重大なネタバレを避けつつ、紹介していこう。
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— TVアニメ「BEASTARS〈ビースターズ〉」 (@bst_anime) September 20, 2019
動物が生きる社会を、リアルに描く
「動物の擬人化」 これだけならよくある話
「動物たちを擬人化した世界」というのは、珍しくない。
世界的に有名なディズニー映画でもよく見られるし、
子供向けの人形劇・きぐるみ劇も、動物をモチーフにしたキャラクターがほとんどで、
幼少期から馴染み深いものになっているはずだ。
だが、例えばミッキーマウスが、ネズミの生態を色濃く表したりはしない。
あくまでデザイン上、動物をモデルにしているだけだし、
ほとんどの動物キャラクターは、そうだろう。
『ビースターズ』は、まずそこから違う。
肉食動物も草食動物も、生態そのままに擬人化
登場するキャラクターたちは、動物の生態をできるだけそのまま受け継いでいる。
イヌ科は、嗅覚で状況を察知したり、
ネコ科は、きまぐれで行動し、あまり群れなかったり。
クマ科の体格は大きく、ネズミ科は踏み潰されるほど小さい。
中でも、最も重視して描かれるのが、
「肉食」と「草食」という違いだ。
肉食動物は、草食動物の肉を食べたい、という本能を。
草食動物は、肉食動物から逃げろ、という本能を、お互いが潜在的に持っている。
だが別に、弱肉強食の世界が広がっているわけではない。
むしろこの世界は、我々人間の社会とほとんど変わらないような世界が広がっている。
この世界では、「食肉は犯罪」なのだ。
だから肉食動物たちも、豆類などを食べている。
動物たちの生態はそのままに。
ただし「食肉は犯罪」という社会。
つまり、
動物たちが、「倫理」「道徳」を持った世界。
これが、『ビースターズ』の世界だ。
肉食と草食、それぞれの立場を細かいところまで描く
しかも物語の主な舞台は、
同じ学園の、同じ部活動という狭いコミュニティの中。
もちろん部員は、肉食動物と草食動物、分け隔てなしで構成されている。
どんなことになるか、想像してみてほしい。
草食からすると、
自分がいつ食べられてもおかしくない状況に、
毎日さらされる、ということだ。
当然不安にもなるし、肉食の部員を疑い、警戒することもある。
そして逆に肉食からすると、
そうした疑いの眼差しを、常日頃受けている、ということにもなる。
「犯罪者予備軍」というレッテルを貼られながら、
学園生活を営むことになる。
これだって非常に辛い。
肉食と草食の立場が、なんとなくイメージできただろうか。
『ビースターズ』では、世界観が非常に細かいところまで描き込まれているので、
読めばそれだけで、両者の立場の違いが、よーくわかることだろう。
動物社会ならではの、青春ドラマ
食肉があろうが、恋もある
「食肉は犯罪」とされている、
ということは、
「法律を破って食肉を犯すものが、時には現れる」、ということだ。
そしてあろうことか、
この物語は、学園内で食肉の事件が起こってしまったところから始まる。
犯人は不明だが、学園内の肉食の生徒が食べたのではないか、という噂が流れる。
これでは肉食と草食がギスギスするどころか、
推理小説のような展開にすらなってしまいそうだ。
しかし!
『ビースターズ』は、あくまで青春ドラマ!
こんな、とことん人間社会ではありえない世界観で描かれるのは、
肉食動物と草食動物の恋愛ストーリー!
主人公の狼レゴシは、ウサギの女の子ハルに恋をしてしまう!
そこで苦悩する様を描いているのだ!
迫真の心理描写に、ありえない「共感」が生まれる
この感情は、恋なのか?
それとも肉食の本能なのか…!?
こんな心境を経験することは、我々人間には到底ありえないだろう。
しかし『ビースターズ』でのキャラクターたちの心理描写は、
作者がまるで体験してきて描かれたかのように豊かかつ迫真であり、
読み進めるほど、読者はレゴシの悩みに寄り添えるくらいになっていく。
現実にはありえない世界、立場、心境、悩み。
普通に考えて、人間の我々には共感できるはずがない。
けど読んでいくと、
なぜか、共感してしまっている自分がいる!
『ビースターズ』の最大の面白さは、
ここにあると思っている。
恋愛だけじゃない! 友情もある!
「学園青春ドラマ」は、恋愛だけではなく、友情ももちろんある。
肉食動物の強さを隠しながら生きてきた狼がレゴシならば、
反対に、社会的に強くなり続けようとする草食動物、アカシカのルイがいる。
ルイは学園トップの人気者の優等生。 レゴシとはまるで正反対。
完璧に見えるルイにも悩みがある。
どれだけ強くても、草食は草食。
肉食には敵わない。
そんなコンプレックスを持っていた。
そのため、肉食なのに強さを隠して生きるレゴシと、
衝突することもしばしば。
「肉食の強さが妬ましい」
これもまた、人間の我々には共感できなそうな悩みだ。
だがこれも、
読めば読むほど共感できてしまう!
草食動物であるルイの立場や、社会的状況、なにより心理描写が、
これまた丁寧に描かれているからだ。
「草食から見た肉食」、「肉食から見た草食」、
それぞれの視点を楽しむことができる。
魅力的なキャラクターがいっぱい!
狼のレゴシ、ウサギのハル、アカシカのルイ。
この3人が、物語の主軸となるが、他にも魅力的なキャラクターが多数登場する。
サブキャラクターにスポットを当てて、
また違った視点で丸々一話描かれたりもする、いわゆるサブストーリーもある。
これがまたおもしろい話ばかりだ。
草食が、肉食と一緒に撮った写真をSNSにアップするのが流行り、とか、
改良品種のラブラドールレトリバーは知能が高いが、そのせいでいじめられたり、とか。
『ビースターズ』の世界ならではの日常風景や社会問題を見ることができて、
またさらに世界観に深みが増すのだ。
個人的には、
おいしいタマゴを産むために努力を惜しまないメンドリ、レゴムの話が好きだ(笑)。
特異な内容だが、万人に受ける内容
かなりぶっとんだ世界観であることは間違いないが、
そこまで人を選ぶ内容でもないと思っている。
ケモノ好きのいわゆる「ケモナー」向けの作品かと言うと、そういうわけでもない。
「食肉は犯罪」という世界だが、
ベジタリアンやヴィーガンを強要するような思想が描かれているわけでも、決して無い。
そもそも、「マンガ大賞」を受賞している作品なのだから、
万人に受ける作品であることは確かである。
そこは安心して読んでみて欲しい。
『ビースターズ』の世界へ
動物たちがリアルに生きてる社会で、人間の我々が得られる「共感」。
気になったのなら、是非読んで確かめてみて欲しい。
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公式の特設サイトでは、試し読みもできる。
ここまで読んでくれたあなたも、
動物たちの青春! 『ビースターズ』の世界へ!
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