劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』、2020年1月17日公開です。
楽しみすぎて、コミックスを延々とループしてしまっております。
そんな中で気がついた、
最新8巻(2019年12月現在)での、私の考察をお伝えします。
『メイドインアビス』の深みが増す内容になっていると思います。
※TVアニメ(1~3巻)以降のネタバレがありますので、未読・未視聴の方は、お気をつけ下さい。
『メイドインアビス』を知らない人は、こちらで「ネタバレなしレビュー」を掲載しているので、
よろしければどうぞ。

目次
ファプタが受け継ぎ、イルミューイが託したもの
ここから先は、8巻を既読済みとして、記述していきます。
ファプタの特徴的なパーツ
「成れ果ての姫」ファプタは、村(イルブル)となったイルミューイから生まれた。
ヴェロエルコ(ヴエコ)曰く、「イルミューイのただ一つの願いから生まれた、最後の子供」。
ファプタの姿は、ナナチにも似たモフモフだが、
他の生物には見られない、特徴的なパーツを持っている。
頭部の、結晶のような3つの赤い部位。

【出典】『メイドインアビス』第6巻 ©つくしあきひと・竹書房
これは一体、何なんだろう?
その疑問を持ちながら、8巻を読み直していると…
まだ声を発していた頃のイルミューイ、
彼女が似たようなパーツを持っているではないか。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
さらに遡ってみると、この原型が見えてくる。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
アクセサリーのようだが、
イルミューイは、こんなものを頭に付けていただろうか。
覚えがないのもそのはず、さらに前では、首飾りとしていたのだ。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
異形化が進んだために、首に付けてはいられず、やがて頭に移し替えた、
といったところか。
なんと細かい描写だろう。
首飾りのルーツは?
しかしそもそもこの首飾り、イルミューイが元々装備していたものではない。
8巻の表紙は、イルミューイの全身がよくわかる絵となっているが、
ここではそうした装飾品の類は、一切身につけていないことがわかる。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
ヴエコとイルミューイが、ヤドネを観察するベラフに気づかれないように髪に花を刺しこんでいっているのか、なんとも微笑ましいワンシーンである。
この絵の場面は、ガンジャ隊がショウロウ黄金郷に到達して、
ヤドネを発見した後、「水もどき」の症状発症前、
ということになる。
首飾りは、これより後に身に着けた。
これは実は論ぜずとも、明確に描写されている。
イルミューイに「水もどき」が発症する直前、
それまでの出来事をダイジェスト的に描いたシーンだ。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
この一連の絵から察するに、
この首飾りは、「ヤドネの形見」であるようだ。
イルミューイが可愛がっていたヤドネが、原生生物に捕食された様子、
そして、悲しむイルミューイのために、首飾りを作り慰めるヴエコの様子が、
描かれている。
補足: ヤドネの歯牙
ヤドネにこんな部位あった…? と疑問に感じるだろうが、
「ヤドネの歯牙が鋭い」という説明は、1巻のライザの封書に記述されている。

【出典】『メイドインアビス』第1巻 ©つくしあきひと・竹書房
あるいは、捕食されてしまった跡の、どこかの骨の一部かもしれないが、
正直言って、どの部分だろうと関係ない。
「形見」という意味を持つことが重要なのだ。
首飾りに込められた思いは?
首飾りは、イルミューイが可愛がっていたヤドネの形見、であるとして、
それには、一体どんな思い、意志が込められていただろうか。
ここに深く関わってくるのが、ヴエコだ。
首飾りを渡すときのヴエコは、何かを語りかけている。
何を願って、イルミューイに、ヤドネの形見を託したか。
これは、ヴエコの人柄から容易に想像がつく。
「忘れないでいてあげて」 といった優しい言葉だろう。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
ヴエコは、「イルミューイの頭の中」(イルブルの端、目の奥)に捕らわれても、
魂だけとなった「イルミューイの子供たち」に、名前を付け、ずっと忘れないでいる。
この理念を、このときイルミューイにも説いていたのだろう。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
つまり、首飾りはイルミューイにとって、
「失った子を忘れないでいるための象徴」
となった。
そしてこれは、イルミューイがやがて自分の体の形を失っていく中でも、最後まで残っていた。
「自分の体の一部にも等しい」と、無自覚に判断するほど、
重要なもの(思い)であったのではないだろうか。
補足: 「赤子」の形
イルミューイが、ヤドネを我が子のように慈しんでいたことは、
後のシーンからもわかる。
イルミューイが「欲望の揺籃」の力で産みだした「赤子」の容姿は、
ヤドネを模したような造形をしていた。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
ちなみに、ファプタ以外の「赤子」には、頭部にパーツは表れていない。
ただ単に生を願っただけの存在だったからだろうか。
ファプタには、特別な「願い」が込められている。
結論: ファプタの頭部のパーツは…
母親代わりとも言えるヴエコから受け継ぎ、
「最後の子供」のファプタに託された、イルミューイの意志・願いは、
「兄弟たちの無念を忘れるな」という、復讐とも言える強いものとなった。
ファプタの頭部のパーツは、これを文字通り体現したものなのかもしれない。

【出典】『メイドインアビス』第8巻 ©つくしあきひと・竹書房
ファプタの頭部のパーツは、
「失った子を忘れないでいる」という意志の表れ。
そんな考察でした。
頭部のパーツについて、今後語られるようなことは無さそうだが、
こんな背景が込められていたらと思うと、さらに深みが増すものである。
3つ付いているのは、受け継がれた3つの「卵」とも関係しているかもしれない。
今後も何か思いついたら取り上げるので、良かったらフォローをよろしくお願いします。
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